《吸着水》とは

  • タンパク質や親水性ポリマーの表面には通常の水(自由水)とは異なる《吸着水》と呼ばれる水が存在します。
    親水性ポリマーを有する透析膜において、膜の表面に存在する吸着水の運動性を高めると、血液中のタンパク質との反応がおきくくなると考えています。(図1)
    (吸着水は水和水などと呼ばれることもあります。)

  • 【図1】透析膜表面およびタンパク質表面の吸着水イメージ

生体適合性の追求東レはポリスルホン中空糸膜の生体適合性を追求し新たな膜表面改質技術を開発しました。

  • 【親水性の向上と優れた抗血栓性】

    NVシリーズは吸着水に着目した膜表面改質技術によって、高い親水性をもった厚1)い柔軟層を有しています。(図2、図3) 同時に膜表面に存在する吸着水の運動性を向上させることによって、タンパク質などの付着(ファウリング)が抑えられ、血小板への刺激が軽減されています。1) 2)(図4)
    これらのことから、NVシリーズでは、優れた抗血栓性が期待されます。

  • 【溶出物の抑制】

    従来の東レ製ポリスルホン膜と同様に、親水性ポリマーをγ線で架橋固定し、溶出を抑制しています。1)(図5)
    NVシリーズはワンランク上の生体適合性を実現したダイアライザです。

  • 【図2】 膜表面の親水性分布(2次元ATR)

  • 【図3】 膜表面の柔軟層(AFM画像)

  • 【図4】 膜表面改質技術による吸着水の運動性変化と血小板付着抑制効果

  • 【図5】 中空糸膜のDMAc(有機溶媒)による溶解像

透析性能の向上膜表面改質技術は、透析性能向上にもつながります。

  • 【シャープな分画特性、ファウリング低減】

    膜表面の改質によって、分子量分画特性は従来モイストタイプ(改質前)に比べ、よりシャープになっています。(図6)



    【図6】 デキストラン分画特性(水系評価/社内データ)


    測定条件:
    中空糸本数40本×12cmのミニモジュールを作成
    デキストラン(FULKA社製)溶液:平均分子量
    1,200(No.31394)、6,000(No.31388)、15,000~20,000(No.31387)、40,000(No.31389)、
    56,000(No.31397)、222,000(No.31398)を濃度が0.5mg/mLになるように限外濾過水に溶解
    QBi=1.8mL/min で循環(QF: 0.36mL/min)
    GPC 測定:(カラム)東ソー-TSK~gel-GMPWXL、40°C(検出)示差屈折率計(東ソー社製、RI-8020)

  • また、膜表面へのタンパク質などの付着(ファウリング)を低減することで、経時的なアルブミンふるい係数の変化を抑制することを確認しています。1)2)(図7) 透析開始直後のアルブミン漏出を軽減することが期待されます。



    【図7】 アルブミンふるい係数の経時変化(牛血液系評価/社内データ)


    ※測定条件:
    牛血液(Ht=30%、TP=6.5g/dL)、37°C、QB=200mL/min、QD=0mL/min、QF=10mL/min/m2

  • 【除去性能の向上】

    NVシリーズは、小分子量物質から低分子量タンパク質までの除去性能を、より高いレベルで実現しています。(図8)



    【図8】 溶質除去性能(牛血漿クリアランス/社内データ)


    ※測定条件:
    牛血漿( TP6. 5g/dL)、37℃、1 時間値(QB=200mL/min、QD=500mL/min、QF=10mL/min/m2

  • 【血液・透析液流れの改善】

    ハウジング構造を見直すことで中空糸の分散性を高め、血液と透析液の流れを改善しました。また、静脈側ヘッダー部の勾配を大きく取り、プライミング時の気泡滞留を低減しました。

<引用文献>

1)上野良之ら:新しい抗血栓性透析器(NV)の開発 .腎と透析 71 別冊ハイパフォーマンスメンブレン 11:44-50, 2011

2)川西秀樹:ポリスルホン膜ダイアライザC東レ 竹澤慎吾, 福田誠(編集):新ハイパフォーマンスダイアライ ザ Up to Date, 158-166, 東京医学社, 東京, 2016