高い吸着性能はそのままに、抗血栓性を高めたPMMA膜

膜の設計コンセプト

  • 膜表面の吸着タンパク質

    PMMA膜は、各種タンパク質を吸着することが知られています。

    透析中の血液凝固の原因の1つとして、膜表面に吸着したタンパク質が構造変化を起こすことにより、血小板がこれを認識して膜表面に付着して活性化することが考えられます。
    NF膜では、膜表面に吸着したタンパク質の構造変化を抑えることで、血小板の付着抑制を目指しました(図1)1)

  • 【図1】 膜表面の設計コンセプト(イメージ図)

  • 付着したアルプミンの構造変化

    膜に吸着したアルプミンの構造変化を、ATR-IR(赤外分光法)にて、評価しました。
    その結果、NF膜に吸着したアルプミンのアミド結合のピークは、従来PMMA膜に吸着したものと比べ、水溶液中に存在するものに近いピークを示しました(図2)1)

  • 【図2】 膜に吸着したアルプミン(アミド結合)のATR-IR測定

NF膜の特徴

  • [特徴1]抗血栓性の向上

    膜へのフィブリノーゲン吸着・血小板付着抑制
    NF膜は、従来PMMA膜に比較して、フィブリノーゲン(凝固因子)の吸着や、血小板付着を抑制することが確認されています(図3,4)2)

  • 【図3】 フィブリノーゲン吸着量

  • 【図4】 膜表面の血小板の付着(SEM写真、ヒト血液を用いたin vitro試験)

  • [特徴2]PMMA独自の吸着性能

    タンパク質の吸着
    NF膜は、血小板の付着を抑制する一方で、PMMAの特長であるタンパク質の吸着性能は従来と同等であることを確認しています。(図5,6)2)

  • 【図5】 膜吸着タンパク質の電気泳動像 【図6】 B2-MG吸着量
    ♯:小型ダイアライザを用いた循環実験 (ヒト血漿、in vitro)

吸着膜による大分子量物質の除去

  • PMMA膜のような吸着特性を有する膜は、血液透析(HD)や血液透析濾過(HDF)で除去できない 大分子量物質の除去が可能です。
    大分子量物質にも尿毒症物質が存在するという報告もあり、 除去の必要性が論じられている中で、吸着はそれら大分子量物質を除去するのに有用な手段と考えられます(図7)3)

  • 【図7】 治療モードと物質除去特性(イメージ)

<参考資料>

1)W. Oshihara, H. Fujieda and Y. Ueno:"A New Poly(Methacrylate)Membrance Dialyzer, NF, with Adsorptive and Antithrombotic Properties." Contrib Nephrol. 2017, 189, p230-236.

2)高橋博ら:「血小板付着を抑制した新規PMMA膜人口腎臓フィルトライザー®︎NFの創出」、腎と透析 2013m 75, 別冊, p22-25

3)青池郁夫:「PMMA膜の有用性を再考する」第23回北海道臨床工学会ランチョンセミナー(2017)